『Self-development』は自己啓発という意味です。
どうもみなさん月刊えのきです。
今日はいきなりフィルムの自家現像のやり方(とりあえずモノクロネガ)についてお話しようと思います。
もう数多の諸先輩方の書籍やブログで散々やりつくされたネタですが、やります。
始めやすい、ドスタンダードな現像方法とか
おすすめグッズとかできるだけ詳しく紹介しますのでよろしくどうぞ。
さて前回のエントリーをきっかけ素直にフィルムカメラを始めたみなさん。
始めてはないけどフィルムに興味のあるみなさん。
一度は聞いたことがあると思います。
『自家現像』
文字通り自分の家で現像やっちゃうことなのですが、
お店に現像出すのと何が違うん?
まあまずはそこに疑問がありますよね?
趣味とはいえメリットを追及する姿勢は大事だと思います。
そこで自家現像のやり方の前に自家現像をする利点をお話しします。
①どんなフィルムでも現像できる。
②増/減感できる。
③画の調子を自分好みにできる。
④お店に出すより遥かに早い。
⑤楽しい。
⑥かっこいい。
こんなところでしょうか?
よく言われる
「お店に出すより安上がり!」
っていうのは個人的には微妙だなと思います。たくさん枚数撮るならもちろんフィルム一本当りの現像代としては安上がりになるのですが、初期投資(っていうほどかかりませんが)考えると、たくさん枚数とって初めて実感できるぐらいの感覚で構いません。コスト的に元を取るつもりではじめるならあんまりお勧めしません。
①どんなフィルムでも現像できる。
これが一番大きいメリットかもしれません。
首都圏ならともかく、ちょっと地方に出るとそもそもモノクロはお店で現像断られることも結構あります。首都圏でもプロラボとかでない限り基本は外注になります。
みんな大好き(?)最新デジタル機と解像度ガチンコ勝負できる
ゴリゴリ解像フィルム、『Adox CmS20Ⅱ』とかも専用軟調現像液じゃないと連続階調にならずドンシャリになっちゃいます。
お店に「現像液は◯◯使って!」とか注文できるはずもないので、(極稀に極小規模な手現像してるようなラボで対応してくれることもあります)
特殊なフィルムとか普通のフィルムでも色んな現像液による違いを試せるのが自家現像のよいところですね。
②増/減感できる。(③画の調子を自分好みにできる。)
これもお店だと中々対応してくれない件ですね。大都市のプロラボならまあまあ対応してくれますが。
皆さん1度は手にとるTri-X(iso400)。たまには違うの使ってみるかと、露出計の設定変えずにそのままアクロス(iso100)使ってた!!
みたいなこと、ありますよね?(僕は覚えてるだけで10回ぐらいやらかしてます。)
そんなときに助かるのが増感処理。
読んで字のごとく
感度を増やす処理のことです。
なにやら難しそうに聞こえるかもしれませんが、単純に後述現像工程の時間を長くするだけです。(現像液の温度をあげる方法もありますがコントロールしづらいのでオススメしません)
若干コントラストがきつくなったり、粒状感が強くなっちゃったりするんですが、概ねモノクロネガフィルムならパッケージに書かれてるiso感度から1段~2段くらいは増感して使えます。
減感はその逆ですね。
現像時間を短くすることで、本来のiso感度より、低い感度として現像できます。
副次的な効果として、滑らかな快調を狙ったりすることが期待できます。
先程例で挙げた撮影時の感度設定ミスの救済以外にも、
思い描く作品のイメージを実現するため(コントラストや粒状感の強弱等のため)に、敢えて最初からiso感度より増/減感前提で撮る人もわりといます。(私は淡いコントラストが好きなので減感前提です)
増感にしても減感にしても
フィルムや現増液の種類によって現像時間の足し引きは変わってきますのでテストが必要なのが基本ですが、
大抵どのフィルムや現像液も大体世の中の誰かが試したことがあるので、わりとデータは転がってたりします。
(massive dev chartという素敵なサイトがあります。https://www.digitaltruth.com/devchart.php?Film=&Developer=Rodinal&mdc=Search)
ちなみにiso感度じゃない撮影感度のこと
EI [exposure index]と通常いいます。
例えばiso400のフィルムをiso200相当前提で撮影するなら「EI200で撮る」と言うと、コイツわかってるな感あるのでオススメです。
④お店に出すより遥かに早い。
モノクロネガはお店にだすと、先ほど書いたとおり、ほぼほぼ外注になるので時間がかかります。平気で一週間以上かかります。
短気な僕はそんなに待てません。
もうなに撮ったのかも忘れるレベルです。
その点自家現像は
準備~片づけまで慣れれば30分かからないくらいでできます。
速い。もうデジタル写真のフォトショ現像より時間かからないんじゃないかと。
⑤楽しい。
⑥かっこいい。
趣味においてこの二つは最も大事な要素だと思ってます。
やってみよう。やってみなければわからない。
はい。自家現像のメリットが少しでも伝われば幸いです。
前置きがとんでもなく長くなりましたが、
ここから今日の本題です。
具体的にどうすりゃ自家現像できるのか、方法と必要な道具類についてお伝えします。
僕がいつも使ってる道具はこれらです。
まずひとつずつ道具について書きます。
自家現像で使う道具は、
絶対必要な道具と、無くてもいいけどあると便利な道具に大別できます。
(なお今回紹介する道具はスタンダードな現像方法で使うやつです)
<絶対必要な道具>
①ダークバッグ(or完全暗室)
先ほどのぼくが使っている道具写真のなかでは銀色の防災用巾着みたいな見た目のやつです。
要は撮影済みフィルムを、現像タンク(後で紹介します)に詰めるときに光浴びちゃうと大変なので、現像タンクに詰めるまでは完全暗環境が必要なんですね。
そこで登場するのがダークバッグor完全暗室
富豪の皆さんには迷わず完全暗室の製作をオススメしますが、
普通はダークバッグを使います。
新品で3000円そこそこです。ヤ〇オクとかで腐るほど転がってますし、SNSとかで探せば譲ってくれるフィルム引退親切おじさんが結構いると思います。
一般的によく売ってるのは↓こんな感じの見た目のやつです。両サイドから腕つっこめるようになってる黒い袋です。
携帯性抜群でかさばらなくて用途的には必要十分なんですが、たたでさえ不慣れな手さぐり状態で、夏場なんかは蒸れますし、中空の立体構造になるダークバッグが個人的には使いやすいと思います。
昔ながらのこういう先ほどのダークバッグの袋部分を箱にしたようなやつとかがあります。
HANSAだかコニカだかのブランドで作られてたと記憶してますが、新品でこんな嵩張るニッチな製品を作ってくれる会社があるわけもないので中古から探すことになります。安いです。2000円~3000円くらいで買えると思います。
ちなみに僕が使っているのは
PHOTOFLEX社の『Changing Room』という製品。
8000円くらいで新品購入できます。
先ほどの箱部分を折りたたみできるテント構造にした。みたいな製品。
使いやすいですし割とお勧めです。
まあダークバッグに性能差なんてもんはないので好きなのを選べばいいと思います。
②現像タンク
その名の通り、フィルムを詰める円筒状の箱です。
ここに各種ケミカルを注いでフィルムを現像します。
LPL製の新品が3000円強ぐらいで入手できます。
大きく分けて、金属製と樹脂製があります。
金属(ステンレス)製の特徴は
・経年/使用による劣化がしにくい
・熱伝導性が高いので外気の温度が内部に伝わりやすい。
・裏を返すとケミカルの液温調整が外からできる。
樹脂性の特徴は
・外気の温度の影響を比較的受けづらいので保温が容易。
・どうしてもそのうち劣化する。
・金属製よりラフに扱っても錆びとは無縁
お好きな方を選べばいいと思います。
現像タンクも某フリマアプリとか某オークションで腐るほど転がってますが、
中古品ならなんとなく金属製が安心だと思います。
選び方としては、出来るだけ小容量のものを選ぶことをお勧めします。
大容量のものは一度にたくさんのフィルムを現像できるので効率的なのですが、最初の内は現像にムラができやすかったり、当然消費する液量が多いので一本のフィルムだけ現像したいとき等に扱いに苦労します。
僕は135、120のどちらのフィルム共、現像タンクは複数現像用と一本のみ用現像をそれぞれ使い分けています。
どのメーカータンクがおすすめか?とよく聞かれますが、手に入るものならなんでもいいです。
海外で定評あるのは、JOBO、パターソンの樹脂製タンク
日本では、LPL、マスコのステンレス製タンクです。(マスコは生産終了してます)
③ハサミ
ダークバッグのなかでフィルムを切ったりするのに使います。
素手より確実なのでハサミを使います。刃物なので扱いは慎重にどうぞ。
100均ので十分です。
④薬品類(ケミカル)
モノクロネガ現像に必要な薬品です。
・現像液 ~フィルムを現像出来ちゃうやつ~
・停止液 ~現像液の作用ストップ出来るやつ~
・定着液 ~フィルムに残った余計な未露光分の銀を溶かして安定させるやつ~
の三種類です。
薬品もほんと色々商品があるので好きなやつ使えばいいと思います。
ただ定番はあります。
・現像液の定番といえば
『KodakD-76』、
『T-maxデベロッパー』、
『ロジナール』
らへんだと思います。
ここらへんはいろんなフィルムを綺麗に現像できる汎用性の高さ、
世界中で定番ゆえにフィルム別の増/減感データがあつまりやすいのがメリットです。
粉で売っていてそれをお湯に溶かして作るもの
カルピスみたいに原液を希釈してつかうもの
等がありますが液体の方が若干手間が少ない分、ラクはラクです。
・停止液は現像液(アルカリ性)の作用を止められる酸性の強めな液体ならなんでもいいです。お酢でもいいです。
僕は薬局とかで売ってるクエン酸を水に溶かして停止液としてます。停止液として10~20gぐらいしか使わないので経済的ですし、酸っぱい匂いがしないですし、スポドリもシソジュースも重曹と合わせて炭酸水も作れますし、一家に一本クエン酸をお勧めします。ひとつ500円くらい。
・定着液は
硬膜タイプと非硬膜タイプがあります。
硬膜タイプは傷が付きにくいというメリットもあるにはあるんですが、
水洗時間がやたら伸びたり、フィルムによっては「硬膜はつかうな」とメーカーが言ってたりデメリットが割と目立つので、
とりあえず非硬膜タイプ選んどきましょう。
定番は中外写真薬品(株)の『マイフィクサー』が定番だと思います。
定着液で画質が変わるわけでもない(と思う)し、値段で選んで良いと思います。
僕も マイフィクサー ユーザーです。
ひとつ900円くらい。
⑤粉なし手袋
僕は手袋は絶対必要だと思います。
ダークバッグの中でフィルムを指紋でべたべたにしたくないですし、何より現像薬品はそこそこ劇薬なので危ないので、安全の為に手袋はしてください。
使い捨ての粉なしゴム手袋がお勧めです。
僕が使ってるのはア〇ゾンで800円くらいの100枚入りのやつ。極薄です。いいですよね極薄。
⑤液温計
薬品の温度測るのにつかいます。
最低二本くらいあると作業が捗ります。
ステンレス製の方がラフに使えますが、ガラス製で十分です。
丁寧に使いましょう。1本500円くらい。
<無くてもいいけどあると便利な道具>
①ビーカー
要は現像タンクに入れるまで薬品を正確な量で保持できればいいので、
液体を注ぎやすくて薬品耐性があれば他のものでもいいですが、あった方がいいです。
そんなに高いものでもないですし。
液量が見やすいので、目盛り付で透明な樹脂製だと扱いがラクなのでお勧めです。
現像液、停止液、定着液用に最低3つあると良いです。
容量ですが個人的には2リットルのものがいろいろ使えて便利だと感じます。
ひとつ1000円しないくらい。
②水滴防止剤
フィルムを乾燥する時に水滴が残っていると乾いた時に跡が残ります。
なのでスポンジとかで水滴を拭きとってやるんですが、下手すると傷が付きます。
そこで登場するのが水滴防止剤。
現像工程の最後のほうでフィルムを水洗するのですが、水洗後に水滴防止剤をたらすと、フィルムから水滴がつかなくなります。
いちいち拭かなくてもいいし仕上がりがとてもきれいになります。
フジフイルムの『ドライウェル』が定番です
200mℓの小さいやつでも何十回か使えます。
1つ400円しないくらい。
③フィルムピッカー
135フィルムを撮影後、巻き取りまくった時にパトローネに引っ込んだ
ベロを出すのに使います。
フィルム出せないと現像タンクに移せないですからね。
巻き取りまくらなければいいし、パトローネ自体を破壊すれば関係ないし、
中判オンリーな方にも無用の物です。
ひとつ1000円くらい。
④撹拌棒
その名のとおり薬品とかを撹拌する棒です。
写真のはLPL製のやつ。ひとつ800円くらい。
ぶっちゃけ液温計で混ぜればいいんですけど、やっぱり専用品は混ざり易いですし、
なにより先程液温計は丁寧に使いましょうといったばかりなので…。
④ゴムハンマー
ゴムでできたハンマーです。
現像中の泡とりとかにあると便利です。
現像タンクがマスコ製の方はこれは必須です。
覚えておいてくださいね。
叩ければなんでもいいです。ぼくが使ってるのはひとつ600円くらいのやつ。
正確な現像時間を測るのに便利です。
普通に時計で十分なんですけどね。
タイマーの方がラクです。ひとつ1000円前後。
⑥フィルムクリップ
水洗後のフィルムを吊り下げて乾燥させるためにつかうクリップです。
洗濯バサミで用は足りますが、専用品だけあって使いやすいです。
たかがクリップのくせにやたら割高なのでオークションとかで中古を探しましょう。
その際重り付を探されるのをお勧めします。
乾燥時上からフィルムを吊り下げるだけでなく、重り付クリップをフィルムの下端につけておくことで、フィルムの巻きグセが改善します。
道具についてはとりあえずこんなところです。
便利な道具については予算と相談して必要に応じて揃えていけばいいと思います。
絶対必要な道具についても、若者は(特に女子)はSNSとかで自家現像の道具で嘆いていたら親切な先輩が集まってきて、道具を譲ってくれることもままあります。
よし。道具の話おわりです。
次、具体的に現像方法について淡々と話していきますよ~(疲れてきた)
135フィルム前提で話しますが120でも現像タンクに詰めたらあとは方法は同じです。
<フィルムの現像方法>
①撮影済みフィルムを用意します。
②ベロがひっこんでてフィルムを取り出せない!!!
フィルムピッカーをつっこみます。
③ベロがでた!!
④リールに巻くとき邪魔なので、ベロのとこだけハサミで切り落とします。
!!!注意!!!
~ここからの作業は暗室orダークバッグのなかで~
⑤フィルムをリールに巻いていきます。完全に手さぐりなので多分慣れないうちはここが一番の難関だと思います。フィルムを一本無駄にして、明るいところで何回か巻く練習した方がいいです。
現像タンク、リールによって巻き方が微妙にちがうんですが、そこは説明書良く読んで覚えましょう。ぼくはマスコタンクを愛用しているのですが、専用のリールに巻くアイテムがあったのでそれを使っています。
コツとしてはリールで巻き取っていくのではなく、フィルムをリールに押し込んでいくイメージです。リールで巻き取るようにしてしまうとやりづらいだけでなく、現像ムラができやすいので気を付けましょう。
⑥どんどん押し込んでいく
⑦全部巻けました!!
手さぐりですが、リールからフィルムがはみ出していないか確認します。
⑧現像タンクの中にリールを入れて、蓋をしっかり閉じます。
~ここからは明るいところで作業できます~
⑨お好みの薬品を用意します。
現像液は20℃で使われることが多いです。現像データも20℃のレシピが多いので20℃をつくるのに慣れましょう。現像液を希釈する時に、夏は氷をいれたり、冬はぬるま湯を足したりして。保温については写真のような洗濯桶や鍋に20℃の水をつくっておくとそこにビーカーをつっこんでおけるので便利です。
写真の選択桶は浅すぎて現像タンクはみ出しまくってますが、できれば現像タンクが8割ぐらい沈む深さがあると良いです。沈没してしまうぐらい深いのはNGですが。(タンクに余計な水が入る危険)
⑩タンクの注ぎ口だけを開けて、現像液を注ぎます。
いれたら即タンクの底をシンクやゴムハンマーなりでコンコンと軽くたたいてやります。これは泡取りという作業です。現像液を入れるときに同時に空気も巻き込まれていますがその空気泡がフィルムに触れたままだとそこは現像が進まなくなってしまうので、空気をたたいて追い出すというわけです。
あとはタンクを三回ぐらい縦に回すよう泡立たないようにゆっくり撹拌します。
⑪一分おきくらいに撹拌しつつ泡取りしつつ、フィルムの規定時間まで待ちます。
Tri-Xだったら2倍希釈のD-76現像液で9分45秒です。(EI400の場合)
時間がたったら現像液を排出します。
⑫停止液を注ぎます。20秒~30秒ぐらいで停止は十分ですので、排出します。
⑬定着液を注ぎます。
5分から10分くらい経ったら排出します。(フィルムや定着液によって時間は異なります。)
⑭水洗
タンクからリールに巻かれたリールをとりだして、流水に10分くらいさらしておきましょう。(定着液が非硬膜の場合。硬膜なら30分以上はさらす。)
はい。これでフィルムの現像はとりあえず終了です。
ね?意外と簡単でしたよね。
あとは乾燥させるために洗濯バサミとかクリップに吊るすだけです。
吊るしたらスポンジとかで丁寧にフィルムに残った水滴をとっていきます。
水滴防止剤を使われた方は、拭かないでよいです。拭いちゃダメです。吊るすだけ。
どうでしたでしょうか。
モノクロネガは自家現像に醍醐味があると思います。
わからなかったこととか、他にもっといい方法がある!!
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ので気軽にいっていただけると嬉しいです。
Let's Self-develop!!!!